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(ごとくだいじのさだいじん)
<1139年~1191年> |
大炊御門(おおいのみかど)右大臣藤原公能(きんよし)の長男、藤原実定(ふじわらのさねさだ)です。83番・藤原俊成の甥、97番・定家のいとこです。詩歌のほかに今様(いまよう)、神楽(かぐら)、管弦に優れる多才な人物でした。平家全盛期の12年間、不遇な時期を過ごしたのが、和歌に打ち込むきっかけで、幅広く様々な歌人グループと交友を持ち、歌風を絶賛されました。 |
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『千載集』夏・161 |
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ほととぎすが鳴いた方を眺めれば、そこにほとどぎすの姿はなく、ただ明け方の月だけが空に残っていた。 |
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「暁聞郭公(ほととぎすをあかつきにきく)」という題で詠まれた歌です。平安時代の貴族たちにとって、夏のはじまりに飛来するほととぎすは、季節の訪れを象徴する鳥として、ウグイスのように魅力的なものに思えたようです。特にほととぎすの第一声(初音)を聴くのは風流なことだとされました。そこで山の鳥の中で朝一番に鳴くといわれるほととぎすの声を聴くために、夜を明かして待つことも行われたのです。ほととぎすはとても動くのが速く、後徳大寺左大臣が「ほととぎすの初音だ」と振り返った瞬間、もうほととぎすの姿はそこにはいなかった、という一瞬の視線の動きと、後に残った静けさがしみじみとした余韻を感じさせます。上の句の、ほととぎすの声を聞くという聴覚の世界から、下の句では有明の月を眺めるという視覚の世界へと転じるさまも見事で、鳴き声と月の美しさが溶け合った秀歌です。 |
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【ほととぎす】
初夏を代表する鳥として、昔から詩歌にもっとも詠まれています。背は明るい青色、尾は白黒のまだらで、日本には3月から5月にかけて渡ってくるので、「夏を告げる鳥」として有名です。そのため「時鳥」などと呼ばれて愛されました。文学的にも格調の高い景物として扱われています。平安時代には初音(はつね:季節に初めて鳴く声)を聴くことがブームでした。
【鳴きつる方】
「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形で、「鳴いた方角」という意味になります。「つ」は意識的にした動作、自分がしようと思ってした動作を表す動詞に繋がり、「ぬ」は自然な無意識の動作を表す動詞に繋がる場合がほとんどです。
【眺むれば】
「見てみれば」という意味です。動詞「ながむ」の已然形に接続助詞「ば」がつき、順接の確定条件となります。
【ただ有明の月ぞ残れる】
「ただ」は残れるを修飾する副詞で、「有明けの月」は夜が明ける頃になっても空に残って輝いている月のことです。「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、強意の係助詞「ぞ」の結びとなります。全体で「その方向にはただ夜明け前の月がぽっかり浮かんでいるだけだった」という意味になります。 |
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●ほととぎすは初夏を代表する鳥として、昔から詩歌にもっとも詠まれています。背は明るい青色、尾は白黒のまだらで、日本には3月から5月にかけて渡ってくるので、「夏を告げる鳥」として有名です。 |
●若い頃は順調に出世し、権大納言にまで昇りましたが、27歳で官を降りてから、平家全盛期の12年間、不遇な時期を過ごしました。その間、和歌に打ち込みました。住吉社歌合では「ふりにける 松もの言はば 問ひてまし 昔もかくや 住江の月」の歌で評判を得ました。 |
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●ほととぎすは冬の間はインドから中国南部あたりで過ごし、日本には初夏に渡ってきます。人が寝静まった夜中や明け方にもよく響く声で鳴くので、美しい鳴き声を聞こうと一晩中起きていて、夜明けを迎えることもありました。明け方の第一声を聞くのが風流とされました。同じようにほととぎすの鳴き声を詠んだ33番・紀友則の歌です。「音羽山(おとわやま) 今朝越え来れば 時鳥 梢(こずえ)はるかに 今ぞ鳴くなる」(音羽山を今朝越えて来たら、時鳥が梢の向こうで、今、鳴いているよ。「古今集」)
●「ほととぎす」の歌を読んだ頃は、その歌風が絶賛された頃で、「歌仙落書」には「風情けだかく、また面白く艶なる様も具したるにや」(実定は風情がけだかく、趣向や表現に優れ、艶なる様子も兼ね備えている)と記されています。 |
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●三重県四日市市の昭和幸福村公園にある歌碑には実定の姿が描かれています。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「ほととぎす」の歌碑は、中之島公園よりさらに下流にある嵐山東公園にあります。 |
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