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(ぎどうさんしのはは)
<940年~996年頃> |
従二位式部卿高階成忠(たかしななりただ)の娘で、名前を貴子(たかこ・きし)と言います。中関白・藤原道隆(なかのかんぱく・ふじわらのみちたか)の正妻として、息子の伊周が内大臣、娘の定子は一条天皇の中宮になるなど栄華を極めました。しかし、夫・道隆が病死すると、夫の弟・道長に権勢を奪われ、40代で病死しました。 |
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『新古今集』恋・1149 |
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「いつまでも忘れない」というあなたの言葉が、遠い将来まで変わらないというのは難しいでしょう。だから、その言葉を聞いた今日を限りに命が尽きてしまえばいいのに。 |
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詞書には「中関白(なかのかんぱく)通ひ初(そ)め侍りけるころ」とあります。夫である関白・藤原道隆(みちたか:兼家の長男)が作者の家に通いはじめた頃に詠んだ歌です。毎日のように夫が通ってくる幸せ、「ずっと忘れない」というお言葉ですが、永遠に続く愛があるのでしょうか。ほかの女性に愛情が移るのではという将来の不安を、幸せの絶頂で感じたのかもしれません。だからこそ「今、幸せなまま死んでしまいたい」と歌っているのです。この歌は「新古今集」恋の歌巻三の巻頭を飾る名歌として、後世の歌人たちは、「くれぐれ優しき歌の体」(ほんとうに優しい歌だ)と評価しました。技巧を好んだ「新古今集」の中では珍しいほど素直に自分の想いを詠んでいます。 |
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【忘れじの】
「忘れじ」は、「いつまでもあなたを忘れない(あなたへの愛は変わらない)」という男の言葉です。「じ」は打消しの意志の助動詞です。
【行く末(ゆくすゑ)までは】
「行く末」は「将来」という意味で、全体で「将来いつまでも変わらないことは」という意味になります。
【難(かた)ければ】
「難しいので」という意味です。形容詞「難し」の已然形「難け」に接続助詞「ば」がついて確定条件になります。
【今日(けふ)を限りの】
「今日」は、男が「いつまでも忘れない」と言ってくれたその日を指します。「今日を最後に(死ぬ命)」という意味になります。
【命ともがな】
「と」は結果を表す格助詞、「もがな」は願望を示す終助詞で、「命であればよいなあ」という意味になります。 |
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●夫である関白・藤原道隆(みちたか:兼家の長男)が貴子の家に通いはじめた頃に詠んだ歌です。道隆は大酒飲みで、冗談好きな人であったようです。 |
●貴子の父・成忠は、道隆を見て「必ず大位に至るべき人なり」と人相から占って、娘との仲を許しました。一条天皇の中宮になった定子をはじめ、7人の子を生み育てました。 |
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●「忘れじの」の歌は、道隆が彼女に通い始めた頃に詠まれた歌なので、道隆から「忘れじ」と愛を誓う後朝の歌が贈られ、その返歌だったかもしれません。
●貴子と同時代の女性によく似た歌があります。56番・和泉式部の「今宵さへ あればかくこそ 思ほえめ 今日くれぬまの 命ともがな」(今宵さえ生きていたらこのようにつらく思われるでしょう。今日が暮れるまでに死んでしまいたいと思います。)、59番・赤染衛門の「明日ならば 忘らるる 身になりぬべし 今日をすごさぬ 命ともがな」(明日ならば私はあなたに忘れられる身となってしまうでしょう。だからいっそ今日のうちに死んでしまいたいと思います。)男性の愛が移ろわないか、不安が大きかったのでしょう。
●「後拾遺集」の詞書を見ると、待っていたのに、他の女性のもとに行った道隆をうらむ女性の歌が3首あります。 |
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●和歌だけでなく、詩文にも優れ、殿上の詩宴に招かれるほどの才女でした。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「忘れじの」の歌碑は、 常寂光寺と二尊院の間の長神の杜公園にあります。 |
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