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(ごんちゅうなごんまさふさ)
<1041年~1111年> |
大江匡房(おおえまさふさ)は、大江匡衡(まさひら)と59番・赤染衛門夫婦のひ孫です。正二位権中納言・大宰権帥(だざいごんのそち)まで出世したのは、学者としては異例のことでした。和歌や漢詩の他、多数の著書を残しています。後三条・白河・堀河の3代にわたり侍読(じどく:天皇に学問を教える学者)をつとめたので、墓誌銘には「三帝の師」と刻まれました。 |
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『後拾遺集』春・120 |
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遠く高い山の峰の桜も美しく咲いたことだ。人里近くにある山の霞よ、どうか立たずにいておくれ。あの美しい桜がかすんでしまわないように。 |
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「後拾遺集」の詞書によると、内大臣・藤原師通(もろみち)の家で酒宴があった時に、「遙かに山桜を望む」という題を与えられて詠んだ歌ですので、実際に景色を見て詠んだものではものではありませんが、山の霞を擬人化して、心ゆくまで桜を見ていたいから、どうかたたないでおくれと呼びかけています。作者の大江匡房は、平安時代を代表する知識人ですが、この一首は複雑な技巧はこらさず、春霞が漂う春の陽気の中、遠くの山頂に咲く桜を眺める幸福をうたっています。里に近い山の桜は散ってしまい、もう山の峰にしか残っていません。行く春を惜しむ気持ちも託されているでしょう。遠くの高い山(遠景)と、近くにある低い山(遠景)を対比することで、のびやかで広がりのある歌になっています。上の句「たかさごの おのへのさくら さきにけり」では「S」の音が効いていて、下の句「とやまのかすみ たたずもあらなむ」では「T」音がリズミカルです。こういうリズムで、折り目正しい言葉を使い、壮大な景色を詠みこんだ歌は「長(たけ)高し」(格調が高くて壮大)といって尊重されました。 |
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【高砂(たかさご)の】
「高砂」は、高く積もった砂だということから「高い山」の意味です。播磨国(現在の兵庫県南西部)にある高砂とは違いますが、定家は高砂の尾上と考えていた可能性があります。
【尾(を)の上(へ)の桜】
「尾の上」は「峰(を)の上」ということで「峰の上」、つまり「山頂」「いただき」を意味しています。
【咲きにけり】
「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形で、「けり」は感動の助動詞です。「咲いているなあ!」という詩的な感動を表します。
【外山(とやま)の霞(かすみ)】
「深山(みやま)」に対して、「外山(とやま)」は人里近い低い山のことです。「霞(かすみ)」は立春の頃にたつ霧のこと。平安時代以降、春にたつのを「霞」、秋にたつのを「霧(きり)」と呼び分けるようになりました。京都は盆地なので、よく霞が立ちました。
【たたずもあらなむ】 「なむ」は願望の終助詞で、「立たないでいてくれ」という願いを詠っています。遠くの高山の桜があまり美しいためです。 |
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●「遙かに山桜を望む」という題を与えられて詠んだ歌です。 |
●遠くの山頂に咲く山桜を眺める幸福をうたっています。 |
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●藤原師通の別荘で詠まれたので、「高砂」は播磨国の歌枕とするより、高い山と考えるのが自然ですが、歌枕を連想することも可能です。
●97番・定家は「尾上の桜」を播磨の桜の名所と位置づけた「高砂の まつと都に ことづてよ 尾上の桜 いまさかりなり」という歌を詠んでいます。
●また、匡房の和歌を「浪の花が細く白く、深山からほとばしり出る流れの水に似ている。その流れが絶えようとして尽きないおもむきだ」と高く評価しています。遠景と近景を対比したスケールの大きさは、漢学の家である大江氏らしい歌といえます。 |
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●雄大さ、格調の高さが感じられる歌です。三重県四日市市にある昭和幸福村公園の歌碑には匡房の姿が描かれています。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「高砂の」の歌碑は、亀山公園にあります。 |
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