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(そうじょうへんじょう)
<816年~890年>
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俗名を良岑宗貞(よしみねのむねさだ)といい、六歌仙、三十六歌仙の一人。仁明天皇の死を悲しみ出家しました。その時に残された子が21番・良岑玄利(よしみねのはるとし)で、後の素性(そせい)法師です。「古今集」には宗貞として3首、遍昭として14首が収められています。後に僧正の位に就きました。 |
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「古今集」雑上・872 |
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空を吹く風よ、天女たちが通うという雲の中の道を吹き閉ざしてくれ。舞を終えて帰る乙女たちの美しい姿を、もうしばらく地上にとどめておきたいから。 |
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詞書(ことばがき)によると「五節(ごせち)の舞姫を見て詠める」とあります。遍昭が出家する前の作です。29歳で蔵人(くろうど)という高い地位をえて、宮中の行事に臨んだ若き貴公子・宗貞は、舞の美しさに心を奪われ、少しでも長く見ていたいと、天上界と地上を結ぶ雲の中の通り道を吹き閉ざしてくれと、風を擬人化して呼びかけたのです。「五節の舞」とは陰暦11月中旬、天皇がその年の収穫を神に感謝する新嘗祭(にいなめさい)の翌日に行われました。「豊明節会(とよのあかりのせちえ)」の宴で、貴族や国司の家から選ばれた未婚の美しい娘4人または5人が、天皇の前で踊る舞楽のことです。優雅に踊る娘たちの姿に、仁明(にんみょう)天皇は「天女のような乙女たちをいつまでも引きとめておきたいものだ」と言われました。その言葉に共感した宗貞は、かつて天武天皇が吉野で琴を弾いた時、天女が降りてきて、天皇の琴に合わせて舞ったという伝説を思い出したのでしょう。「五節の舞」の舞姫たちを天女に見立ててこの歌を詠みました。 |
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【天津風(あまつかぜ)】
「天津風」とは「空高く、天を吹く風」のこと。ここでは「天を吹く風よ」と呼びかけた形になっています。「つ」は「沖つ波」などと同じで、「の」と同じ意味の古い格助詞です。
【雲の通ひ路(かよひじ)】
雲の中にある、天上と地上を結んでいる通路のこと。天女がそこを通って天と地を行き交うと考えられていました。
【吹き閉ぢよ】
「雲を吹き飛ばして、天女の通り道を閉ざしてしまえ」という意味です。通り道を塞げば、天女が天上に帰るのを妨げることができるからです。
【をとめの姿】
「をとめ」とは「天つ乙女」、つまり「天女」のことです。この歌は陰暦11月の新嘗祭(にいなめさい)翌日に宮中で披露される「五節の舞」を舞う少女たちを天女に見立てています。宮中での最大の儀式でした。
【しばしとどめむ】
下二段活用動詞「とどむ」の未然形に意志の助動詞「む」の終止形がついた形で、「しばらく止めておこう」という意味です。舞う乙女たちが美しく、いつまでも見ていたいので、天に帰ってしまうのを、しばらくストップさせよう、という意味です。
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●この歌は五節の舞を見て詠ったものです。宮中では11月に新嘗祭(にいなめさい)が行われました。その翌日の豊明節会(とよのあかりのせちえ)という宴で舞われた舞の一つです。 |
●五節の舞は新嘗祭では紫宸殿(ししんでん:内裏の正殿)で、大嘗祭(おおにえのまつり)は豊楽殿(ぶらくでん)で行われました。豊楽殿が火事で焼けた後は大極殿(だいごくでん)が使われました。 |
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●「古今集」仮名序で貫之は遍昭の歌風を「歌のさまは得たけども、まことすくなし。たとへば絵にかける女を見て、いたづらに心をうごかすがごとし」(歌の姿は整っていますが、真実味が足りません。言ってみれば、女性を絵に描いて人の心を動かそうとするが、迫力不足だといえるでしょう。)と言っています。「天つ風」の歌を意識した評価のようです。
●97番・定家は「乙女の姿」という表現が好きで、「天つ風 さはりし雲は 吹きとぢつ 乙女の姿 花に匂ひて」(「拾遺愚草」)などと本歌取りしています。 |
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●天皇の前での舞の練習は、常寧殿(じょうねいでん)や清涼殿(せいりょうでん)で行われました。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では100基の歌碑めぐりを楽しめます。「あまつ風」の歌碑は、亀山公園にあります。
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