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(むらさきしきぶ)
<970年頃~1019・1020年頃> |
漢学者である藤原為時(ためとき)の次女です。藤原宣孝(のぶたか)の妻となり、賢子(かたいこ:58番・大弐三位)を生みました。夫の死後、藤原道長に招かれ、一条天皇の中宮彰子(しょうし)に出仕します。女房名は藤式部(とうのしきぶ)でしたが、「源氏物語」が評判になり、登場人物の紫上(むらさきのうえ)から紫式部と呼ばれました。「紫式部日記」には宮廷生活の様子が記されています。 |
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『新古今集』雑上・1499 |
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せっかく久しぶりに逢えたのに、それが貴女だと分かるかどうかのわずかな間にあわただしく帰ってしまわれた。まるで雲間にさっと隠れてしまう夜半の月のように。 |
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詞書には、「早くより童(わらは)ともだちに侍りける人の、年頃経て行き逢ひたる、ほのかにて、七月十日頃、月にきほひて帰り侍りければ」とあります。幼友達と久しぶりに逢ったが、ほんのわずかの時間しかとれず、月と競うように帰ったので詠んだというのです。雲間にすぐ隠れてしまう月になぞらえ、幼友だちとの慌ただしい再会を惜しんだ歌なのです。この女性は「紫式部集」にも登場しており、9月末には都を出て地方へ行ったことが記されています。作者と同じ受領(ずりょう:地方長官)の娘で、父親の任地に下って行ったのでしょう。女性が自由に外出したり他家を訪ねたりすることが許されなかった時代ですので、再会の喜びは大きかったのでしょう。歌中に友という言葉はありませんが、月を友だちの比喩に用い、わずかの間だけ顔を出して、またすぐ雲に隠れてしまった初秋の月を惜しむ気持ちと重ねあわせています。つもる話もできずに帰られてしまった寂しさはどこか恋の歌を思わせるような雰囲気で、しっとりした情感が伝わります。 |
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【めぐり逢ひて】
月に託して、幼友達と巡り逢ったことを言っています。「月」と「めぐる」は「縁語」です。縁語は関係が深くよく一緒に使われる言葉のことです。
【見しやそれとも】
見たのが「それ」かどうかも、意味。「それ」は表向きは月のことですが、友達のことを指しています。
【わかぬ間に】
見分けがつかないうちに、という意味です。
【雲隠れにし】
月が雲に隠れてしまったことですが、友達が見えなくなってしまったことも含んでいます。
【夜半の月かな】
「夜半(よは)」は夜中・夜更けの意味。最後の「かな」は、詠嘆の終助詞ですが、「新古今集」や百人一首の古い写本では「月影」になっています。十日頃の月とは、夜中には見えなくなってしまう月なので、慌ただしく帰った友の姿と重なっています。 |
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●京都市上京区寺町通にある廬山寺(ろざんじ)は紫式部邸宅址として知られています。紫式部の曾祖父・藤原兼輔から代々受け継がれてきた邸があり、この地で紫式部も成長し、結婚生活を送ったそうです。 |
●廬山寺の境内には母・紫式部の「めぐり逢ひて」の歌碑と、娘・大弐三位の「有馬山」の歌碑があり、「源氏物語」もここで執筆されたと伝えられています。 |
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●平安中期において「めぐりあいて」の歌は紫式部の代表歌ではありませんでした。家集「紫式部集」によると、童友だちとのあわただしい別れを惜しむ歌です。
●ところが、83番・藤原俊成が「源氏物語」を歌人の読むべき教科書だと主張したことによって、紫式部の歌の評価も高まり、「新古今集」には14首も撰入されました。とくに「めぐりあひて」の歌が百人一首に選ばれたのは、歌の中の「雲がくれ」の言葉が、「源氏物語」で源氏の死を暗示する雲隠巻を連想させるからではないかという説もあります。 |
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●宇治橋(うじばし)は、646年(大化2年)に初めて架けられたという伝承のある橋ですが、「源氏物語~宇治十帖(うじじゅうじょう)」にちなんで、橋のたもとに紫式部の石像があります。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「めぐりあひて」の歌碑は、常寂光寺と二尊院の間の長神の杜公園にあります。 |
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