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(ちゅうなごんあさただ)
<910年~966年> |
25番・三条右大臣定方(さだかた)の5男、藤原朝忠(ふじわあのあさただ)です。和漢の学に優れ、従三位中納言にまで昇進しました。父の定方とともに三十六歌仙に数えられました。宮廷女性との機知に富んだ恋愛贈答歌が残っています。43番・敦忠(あつただ)とはほぼ同時代を生きた貴公子同士です。 |
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『拾遺集』恋一・678 |
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もし逢うことがまったくなかったなら、かえって、あの人のつれなさを恨んだり、わが身のはかない運命を恨みに思うことはなかっただろうに。 |
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960年の「天徳4年内裏歌合」で「逢わざる恋」という題目で詠まれた歌です。藤原元真(もとざね)と競いましたが、全体的な調べが流れるように美しく「詞清(ことばきよ)げなり」との評価を受けて勝ちとなった歌です。「絶えてしなくはなかなかに」の「な」のくり返し、「人をも身をも」の「をも」の反復が心地よいです。この歌には「未だ逢はざる恋」と「逢うて逢はざる恋」の二通りの解釈があります。一度も相手に逢えな状況で詠んだとすると、このまま逢えないなら、かえって相手も自分も恨まずにすむだろうという、つれない相手への恨めしい気持ちがこもった歌になります。もう一つの説は、一度逢った後、事情があってなかなか逢えず、ますます恋心がつのるつらさを詠んだというものです。定家は後の説をとっています。43番・44番を「逢不逢恋(逢うて逢はざる恋)」として組み合わているようです。 |
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【逢ふこと】
男女の逢瀬のことです。
【絶えてしなくは】
「絶えて」は副詞で、下に打消しの語を加えて強い否定「絶対に~しない」を表します。「し」は強意の間投助詞です。「なくは」は下の句の「まし」とともに、「…なくは …まし」(…なければ …だろうに)という「反実仮想」の構文を作ります。
【なかなかに】
「かえって」とか「なまじっか」という意味です。物事がどっちつかずで中途半端なので、むしろ現状とは反対の方がよいという感じを表しています。
【人をも身をも】
「人」は相手のことで、「身」は自分のことです。「も」は並列の係助詞で、「相手の不実をも、自分の辛い運命も」という意味になります。
【恨みざらまし】
「恨むことはしないだろうに」という意味です。「ざら」は打消の助動詞「ず」の未然形、「まし」は反実仮想(はんじつかそう)の助動詞で、現実とは反対のことを表します。 |
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●平安宮内裏清涼殿で開かれた天徳四年内裏歌合で、「逢わざる恋」という題目で詠まれて勝ちとなった歌です。歌合とは与えられた題にそう歌を一首ずつ出し合って、その優劣を競います。 |
●天徳四年内裏歌合では6番中5勝していて、三十六歌仙にも選ばれています。三十六歌仙絵はよく描かれました。(今宮神社拝殿に掲げられた三十六歌仙の額) |
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●この歌の構造は、17番・在原業平の歌「世の中に 絶えて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」(もし世の中にまったく桜がなかったなら、春の人の心はどんなにかのどかであろうに。「古今集」)をふまえています。業平が「桜(自然)」を対象にしているのに対して、朝忠は「逢ふこと」に変えています。人目を忍ぶ恋と考えると、たまにしか逢えない運命を恨み、相手のつれなさを恨む恋のせつなさが伝わってきます。
●この歌の本歌取りとして、95番・慈円の「我が恋は 庭のむら萩 うら枯れて 人をも身をも 秋の夕暮れ」(「新古今集」)や、97番・定家の「うくつらき 人をも身をも よし知らじ ただ時のまの 逢ふこともがな」(「拾遺愚草」)があり、一度逢った後、なかなか逢えない苦しみを詠んでいます。 |
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●嵯峨嵐山文華館には朝忠の歌と人形が展示されています。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「逢ふことの」の歌碑は、亀山公園にあります。 |
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