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(ふじわらのよしたか)
<954年~974年> |
45番・謙徳公伊尹(けんとくこうこれただ)の3男という名家に生まれ、美男で、優れた歌詠みでした。源保光(やすみつ)の娘との間に能書家として有名な藤原行成(ゆきなり)をもうけました。ところが、大流行した痘瘡(ほうそう:天然痘)にかかって、兄・挙賢(たかかた)は朝に、義孝は夕に21歳の若さで亡くなりました。中古三十六歌仙の一人です。 |
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『後拾遺集』恋二・669 |
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あなたに逢うためなら、捨てても惜しくはないと思っていた命でさえ、逢瀬を遂げた今となっては、(あなたと逢うために)できるだけ長くありたいと思うようになりました。 |
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激しい恋の情を表現した歌です。詞書には「女のもとより帰りてつかはしける」とあります。恋しい女性のもとに出かけて一夜を過ごし、帰った後に一首したためて贈った歌で、こうした歌のことを「後朝(きぬぎぬ)の歌」といいます。片思いの時は、恋しいあなたに逢えるならば、この恋のために命を捨ててもいい、と思っていたけれど、一度契りを結んだ今となっては、いっそう想いがつのり、今度は逆に、あなたを愛するためになるべく長く生きていたいと願うようになりました、という内容です。作者の心境の変化が技巧を用いず素直につづられており、それがかえって作者の真心と、恋の喜びを強く伝えています。青年らしい初々しさも感じられる歌です。病気のためわずか21歳で亡くなったことを思うと「長くもがな」と詠んだ心情がせつなく思われます。 |
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【君がため】
「あなたのため」という意味ですが、ここでは「あなたと逢うために」、という気持ちを表しています。「君」は男女両方に対して使います。「が」を用いることで古典では親愛の気持ちを表します。
【惜しからざりし】
捨てても「惜しいとは思わなかった」の意味です。「ざりし」の「し」は過去の助動詞「き」の連体形で。「思わなかった」と過去の自分を思い描いています。
【命さへ】
「さへ」は「までも」の意味で、添加の副助詞。「命までも」という意味になります。
【長くもがな】
「長くあってほしい」という意味で、「もがな」は願望の終助詞で、「~してほしい」の意味です。かつては恋のためなら命を捨ててもいいと思っていたこの身だけれども、願いがかなった今はできるだけ命長らえ、あなたと長く逢いつづけていたい、という意味を含んでいます。
【思ひけるかな】
逢瀬を遂げた時から変わってきた気持ちに、今はじめて気が付いたということを意味しています。 |
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●歌を贈った女性は、妻の源保光(やすみつ)の娘ではないかといわれています。能書家として有名な藤原行成(ゆきなり)は義孝の息子です。※行成の書 |
●あなたと長く逢いつづけていたいと願った義孝ですが、大流行した痘瘡(ほうそう:天然痘)にかかって、21歳の若さで亡くなりました。 |
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●この歌を贈った女性を資料で特定することはできませんが、複数の女性との恋愛話があまりないので、妻の源保光(やすみつ)の娘と推定されます。
●「栄花物語」には、若い頃から出家の志が強かった義孝が、父・伊尹の死後、出家して法師になろうかと思う逸話をのせています。しかし、その当時、藤原保光の娘との間に可愛い男の子が生まれたので、その子を見捨てられず出家を思いとどまったというのです。長男の行成は成長して書道の才能を開花させ、三大名書家をさす「三蹟(さんせき)」の一人として有名になりました。 |
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●王朝一番の美男子だと伝えられています。評判の義孝になりすまして女性をだます男性がいて迷惑したことが「拾遺集」に詠われています。「あやしくも わがぬれぎぬを きたるかな 三笠の山を 人にかられて」 |
小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「君がため」の歌碑は、 亀山公園にあります。 |
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