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(ふじわらのさねかたあそん)
<生年未詳960年頃~998年> |
26番・貞信公・忠平のひ孫で、花山天皇・一条天皇に仕えて従四位上左近衛中将に出世しました。中古三十六歌仙の一人で、交友歌、恋歌、贈答歌を数多く残しています。宮廷では花形の貴公子で、数多くの女性と交際しました。しかし、陸奥守として東北地方の任地に赴き、わずか3年後、40歳ほどで病死しました。 |
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『後拾遺集』恋一・612 |
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こんなに恋い慕っているとさえあなたに言うことができません。伊吹山のさしも草ではありませんが、それほどまでとはご存じないでしょうね。私の燃えるような思いを。 |
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この歌は、実方が思いを寄せる相手にはじめて心を打ち明けた歌です。詞書には「女にはじめてつかはしける」とありますので、初ラブレターです。時の宮廷サロンを賑わせた男性に、「燃ゆる思ひを」と言われた相手は、どれほど嬉しかったでしょうか。内容を分けてみると、「かく・と・だに」→「こんなに思ってる・と・さえ」/「え・やは・伊吹の」→「でき・ません・言うことは」 (「言ふ」と「伊吹(いぶき)」を掛けている)/「さしも・知らじな」→「これほどとは・ご存知ないでしょう」/「燃ゆる思ひを」→「この燃える思いを」/というようになるでしょうか。倒置法や序詞、掛詞が入り混じった技巧の多い歌ですが、ストレートな恋愛の歌だと分かります。さしも草を燃やす炎の熱さは、女性への燃えるような熱い思いを連想させます。同音のくり返しで流れるような響きを生み出しています。 |
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【かくとだに】
「かく」は「このように」の意味の副詞です。「だに」は打消しの副助詞で、「~すら」とか「~さえ」を意味します。「かく」は、ここでは「あなたをお慕いしている」ことを示しますので、「このように(あなたをお慕いしていると)さえも」という意味を示します。
【えやは伊吹の】
「え」は副詞「得(う)」の連体形で、反語の係助詞「やは」を従えて不可能の意味を表します。「えやは~いふ」で「言うことができない」となりますが、「いふ」を「伊吹(いぶき)」と掛ける掛詞になっています。「伊吹山」は、美濃国(現在の岐阜県)と近江国(現在の滋賀県)の国境にある山です。
【さしも草】
ヨモギのことで、お灸に使うもぐさの原料になります。伊吹山の名物です。「伊吹のさしも草」は下の「さしも」に掛かる序詞です。
【さしもしらじな】 「さ」は指示の副詞で、「し」と「も」は強意の助詞。「な」は詠嘆の間投助詞で、全体として「これほどまでとはご存知ないでしょう」という意味です。
【燃ゆる思ひを】
そのまま「燃えるようなこの想いを」という意味です。「ひ」は「火」に掛けた掛詞、「さしも草」と「燃ゆる」と「火」は縁語です。また、「思ひを」は前の「知らじな」にかかる倒置法になっています。 |
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●歌枕の「伊吹」の場所には2説あります。まず美濃国と近江国、現在の岐阜県と滋賀県の境にある山で、もぐさの産地です。もう一つは下野(しもつけ:栃木県)の伊吹山です。前者は標高1377m。琵琶湖畔かその姿を見ることができます。※比叡山から眺めた伊吹山 |
●宮廷では花形の貴公子で、数多くの女性と交際しました。舞人に選ばれた実方は、御手洗川に映る自分の容姿にうっとりしたと伝えられています。(上賀茂神社の舞人) |
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●情熱的で自由奔放なところもあり、宮廷では花形の貴公子でした。交際していた女性は20人を超えていたようで、この歌を贈った相手の女性はわかりません。62番・清少納言とも恋仲であったことは、2人の贈答歌が収められている家集の詞書からわかっています。
●「古事談」には、清涼殿で行成と口論になった実方が、行成の冠を庭に投げ捨てて去っていったという事件が記されています。清少納言をめぐる三角関係だとか、自らの歌を批判されたことを根に持ってとかいわれています。冠は殿上人にとって命の次に大切なものです。事を荒立てず、行成は主殿司(とのもづかさ)に冠を拾わせて砂を払い身に着けます。この冷静な行動を評価されて、行成は蔵人頭(くろうどかしら)に抜擢され、一方の実方は、一条天皇から「歌枕を見て参れ」と告げられて、陸奥守(むつのかみ)に位を下げられたというのです。
●ただし、赴任の儀式が正式に行われ、一条天皇からたくさんの餞別(せんべつ)をいただいたという記録があります。左遷ではなく、実方自身が風流を求めて願い出たからとか、陸奥を鎮定する特命を与えられたからという説もあります。 |
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●さしも草はヨモギのことで、お灸に使うもぐさの原料になります。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「かくとだに」の歌碑は、亀山公園にあります。 |
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