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(ほっしょうじにゅうどう
さきのかんぱくだいじょうだいじん)
<1097年~1164年> |
摂政関白藤原忠実(ふじわらのただざね)の息子、藤原忠通(ふじわらのただみち)です。大政治家ですが、院政期の歌壇を盛り上げ、自邸に歌人を集めて歌合や歌会を開きました。保元の乱では後白河天皇側につき、弟の頼長と争って勝利し「氏長者(うじのちょうじゃ)」として太政大臣従一位に至りました。95番・慈円は6番目の息子です。 |
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『詞花集』雑下・382 |
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大海原に船でこぎ出して眺めてみると、雲と見間違うばかりに、沖の白波が立っていることよ。 |
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詞書には「海上遠望」という題で、77番・崇徳天皇の前で詠んだ題詠であることが示されています。まず上の句で広々とした海上の眺めを描き、下の句では、はるか遠くの水平線へと焦点をしぼっていきます。大海原に船で漕ぎ出して見ると、はるかな水平線のかなたの青い空に白い雲が浮かんでいます。空の青さと海の青、雲の白さと波の白という色彩の対比が鮮やかです。白雲の立つ大空と沖の白波とが紛れて一つになる情景は、「春水の船は天上に座すが如し」という杜甫の詩などに見られる漢詩的な発想によるものと思われます。この歌は、百人一首にもある11番・小野篁(おののたかむら)の「わたの原 八十島かけて漕ぎ出でぬと 人には告げよ 海人の釣船」をイメージして詠まれたものとされていますが、小野篁のような孤独感はありません。調べがおおらかで、権力の絶頂にあった藤原氏の長らしく、はてしない海の広がりを感じさせる雄大な歌です。「万葉集」を思わせるような五七調のおおらかな詠みぶりが当時から高く評価されました。
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【わたの原】
広々とした大海原のこと。「わた」は海を意味します。
【漕ぎ出でて見れば】
「船で漕ぎ出して、見渡してみれば」という意味です。上一段動詞「見る」の已然形に、接続助詞「ば」がつき、「すでに行っている」という確定条件を示しています。
【久かたの】
「雲居」にかかる枕詞で、「天・空・日・月・光」などにもかかります。
【雲居】
ここでは雲そのものを意味しています。本来は「雲のいるところ」つまり空を意味します。
【まがふ】
「混じり合って見分けがつかなくなる」という意味です。ここでは白い波と白い雲の見分けがつかない、という意味です。
【沖つ白波】
「沖の白波」という意味ですが、「つ」は上代に使われた古い格助詞で、「の」に当たります。またこの歌は体言止めです。 |
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●詞書には「海上遠望」という題で、77番・崇徳天皇の前で詠んだ題詠であると示されています。「柳の水」は、崇徳院の御所があった所で、清泉がわいていました。井戸に日が当たらないように柳を植えたことから「柳の水」と呼ばれています。 |
●法性寺は26番藤原忠平が創建した藤原氏の氏寺です。忠通は晩年には出家して、法性寺のそばに別荘を建て、法性寺殿と呼ばれました。 |
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●「今鏡」には、さまざまなエピソードが記されています。歴代の摂政関白の中で「身の御才は類(たぐひ)なくおはしましき」とあり、最も才能のある貴公子として讃えられています。通った後には「なつかしくさと薫る香」がただよっていて、まるで「源氏物語」の匂宮(におうのみや)か薫大将(かおるのたいしょう)を思わせるようであったそうです。
●また、「わたの原」の歌は、3番・柿本人麻呂の歌「ほのぼのと 明石の浦の 朝霧に 島がくれいく 舟をしぞ思ふ」(ほのぼのと夜の明ける頃、明石の浦は朝霧に包まれているが、小舟が島陰に隠れそうになるのを私はしみじみと眺めている。)にも劣らないと、人々が称賛したという話も伝えています。
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●11番・小野篁(おののたかむら)の「わたの原」の歌をイメージして詠まれたものとされていますが、篁の孤独感はなく、調べがおおらかで、はてしない海の広がりを感じさせます。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「わたの原」の歌碑は、常寂光寺と二尊院の間の長神の杜公園にあります。 |
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