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(みぶのただみね)
<生没年未詳 ,9世紀後半~10世紀前半頃> |
9世紀後半から10世紀前半頃の人で、41番・壬生忠見(みぶのただみ)の父親です。官位は低かったのですが、歌人としては有名で、多くの歌合に加わりました。「古今集」の撰者の一人、三十六歌仙の一人でもあります。55番・藤原公任の著した「和歌九品(わかくほん)」では、上品上という最高位の例歌として忠岑の歌があげられ、「拾遺集」の巻頭歌にも撰ばれています。 |
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『古今集』恋 ・625 |
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有明の月は冷ややかでつれなく見えた。あの明け方の別れのとき以来、暁(あかつき)ほどつらく悲しく思われるものはありません。
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「古今集」の「逢はずして帰る恋」の歌群に収められています。それによると、女性のもとを訪ねたが、逢ってもらえずむなしく帰る心情を詠った歌となります。つれなく見えたのは「月と恋人」の両方で、月の白さに作者の孤独感が漂います。しかし、つれなく見えたのは「月」だけであるとすると、別れを惜しむ2人を、白々と照らした有明の月が思い出されて、暁を迎えるたびに相手が恋しくなってしまうとなります。定家は、朝に別れる恋人の心情を詠んだものと解釈しました。つれなく見えたのは、恋人である2人の別れを照らす有明けの月だというのです。後朝(きぬぎぬ)の別れの哀愁と、無情の月を対比させてとらえているのでしょう。 |
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【有明(ありあけ)の】
満月を過ぎた十六夜以降、おおむね二十夜以降の月。夜ふけに昇って来て、明け方まで空に残っている月のことです。
【つれなく見えし】
「つれなく」は形容詞「つれなし」の連用形で「無情だ、冷淡だ」の意味です。そのまま「つれない」で現代でも意味は通じます。「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、過去の女との別れを回想しています。また、月のつれなさと別れた女のつれなさを重ねています。
【別れより】
「より」は時間の起点を表す格助詞で、「その時から」という意味になり、現在までの時間の経過を表しています。
【暁(あかつき)ばかり】
「暁(あかつき)」は夜明け前のまだ暗いうちのことです。今の午前3時から日の出までの時間帯で、女の元から男が帰る時刻でもあります。「ばかり」は後の「なし」と組み合わせて、「~ほど、~なものはない」という意味になります。
【憂(う)きものはなし】
「憂き」は形容詞「憂し」の連体形で「つらい」「憂鬱な」という意味です。「夜明け前ほど、憂鬱な時間はない」という意味になります。 |
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●有明(ありあけ)とは満月を過ぎた十六夜以降、おおむね二十夜以降の月で、夜明けの空に残る月のことです。
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●女性のもとで一夜過ごした男性が、女性と別れて帰る暁は、午前3時でした。その合図となったのが鶏の鳴き声や寺の鐘の音です。
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●鎌倉時代の説話集「古今著聞集」には、99番・後鳥羽院が「古今集」の一番の秀歌を尋ねたところ、97番・定家も98番・家隆もともに「有明の」の歌を挙げたと記されています。また、定家は「此の詞の続きは及ばず、艶(つや)にをかしくもよみて侍るかな。これ程の歌一つよみ出でたらむ、此の世の思ひ出でに侍るへし」とし、これほどの名歌を一首でも詠んでみたいと絶賛したそうです。
●女性のもとで一夜過ごした男性が、女性と別れて帰る暁とは何時頃だったのでしようか。平安時代は午前3時でした。その合図となったのが鶏の鳴き声や寺の鐘の音です。丑(うし)の刻までが今日で、寅(とら)の刻になると翌日になるのですが、その日付変更を聴覚で判断していたのです。定家は「女のもとより帰るに、我は明けぬとて急ぐに、有明の月は明くるも知らず、つれなく見えし也」と記しています。 |
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「古今集」の恋の歌は、恋の段階順に一から五に配列されています。忠岑の歌は「恋三」と記されています。こうした部立(ぶだて:テーマ別の分類)による配列法は「古今集」が最初です。江戸時代に出版され絵入本古今和歌集(嵯峨嵐山文華館)
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●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「有明の」の歌碑は、亀山公園にあります。 |
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