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(せみまる)
<生没年未詳。850年~900年?>
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平安前期の人という程度しか分からず、後から伝説化された歌人のようです。出家者ではなく逢坂(おうさか)の関近くに住む隠者です。琵琶(びわ)の名手とも盲目(もうもく)とも伝えられています。 |
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「後撰集」雑一・1089 |
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これがまあ、都から出て行く人も帰って来る人も、知り合いも知らない人も、皆ここで別れてはまた出会うという、有名な逢坂の関なのであるよ。 |
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恋愛や風景描写の多い百人一首の中で、異色の歌といえます。詞書には「逢坂の関に庵室をつくりてすみ侍りけるに、ゆきかふ人を見て」とあります。逢坂の関は、都から東海・東山・北陸などの諸国へ旅する時に通る最初の関所で、ここまでは都の人が見送る習慣がありました。知っている人も知らない人も、出て行く人も帰ってくる人も、別れてはまた逢い、逢ってはまた別れるという逢坂の関。「これ」「この」の類語、「行く・帰る」「知る・知らぬ」「別れ・逢ふ」と対になる表現を3つも盛り込んだ、リズミカルで楽しげな雰囲気の歌なのですが、この逢坂の関を人生にたとえて、中世には無常を表現している歌だと解釈されました。仏教では、生ある者はいつか必ず滅びなければならず、この世で出会った者は必ず別れなければならないという考え方を「生者必滅(しょうじゃひつめつ)、会者定離(えしゃじょうり)」といいます。 |
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【これやこの】
「これがあの噂に聞くあの」というほどの意味です。「や」は詠嘆の間投助詞です。この句は「逢坂の関」にかかります。
【行くも帰るも】
「行く」「帰る」とも連体形なので、「行く人」「帰る人」の意味です。さらにこの場合は、京都から出て行く人と帰ってくる人を意味しています。
【別れては】
「ては」は、動作などについての反復(繰り返し)を意味していますので、「別れてはまた逢うを繰り返す」という意味です。
【知るも知らぬも】
これも連体形で、知人も見知らぬ人も、という意味になります。
【逢坂の関】
逢坂の関は、現在の山城国(現在の京都府)と近江国(滋賀県)の境にあった関所で、この関の東側が東国だとされていました。関所は比較的昔になくなったのですが、歌枕としては有名でよく歌に詠まれています。「逢坂」は「逢ふ」の掛詞。当時、京都に近い国々には防衛のために3つの関所が設けられていました。逢坂の関・鈴鹿の関・不破の関です。 |
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●歌の舞台となった「逢坂の関」は、伊勢国の鈴鹿や美濃の不破と並ぶ三関のひとつで、滋賀県大津市逢坂から大谷町をへて京都山科の四ノ宮に続く坂道です。国道1号線になった今も、ひっきりなしに車が行き交っています。 |
●国道沿いに逢坂山関址の記念碑と逢坂の関記念公園があります。和歌では「逢坂」は歌枕としてよく用いられ、男女の逢瀬をかけました。 |
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●平安時代になって「逢坂の関」が廃止されると、「逢坂」に「逢ふ」が掛けられることから掛詞を含む歌枕として、多くの歌に用いられました。また、逢坂を越えると近江(逢ふ身)になるという言葉遊びから、恋の歌枕として大切にされました。
●蝉丸の歌は恋歌ではなく、逢坂の関を初めて見て感動した旅人や、名所案内するガイドのような詠みぶりです。対句・対義語を連続することでリズムを作り、歌の調べとしては明るさが感じられます。ところが、中世になり無常観が流行すると、この歌から会者定離(えしゃじょうり)といった無常思想を読み取るようになり、定家が高く評価したようです。 |
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●「これやこの」の歌碑は、逢坂にちなんだ62番・清少納言の歌碑、25番・三条右大臣の歌碑と並んであります。国道一号線を渡った向こう側のフェンスには「これやこの」の歌碑パネルがはめこまていました。 |
●実際に関所があった場所は、逢坂山関址の記念碑から少し大津寄りで、関寺の付近ではないかといわれています。 |
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