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(たいらのかねもり)
<生年未詳~990年> |
光孝天皇のひ孫・篤行(あつゆき)王の3男です。はじめ兼盛王を名乗っていましたが、9臣籍に下って平氏を名乗りました。「後撰集」の頃の代表的歌人で、三十六歌仙の一人です。屏風絵や歌合の作者として、村上天皇から5代約半世紀にわたって活躍しました。内裏歌合における41番・壬生忠見との結びの勝負は、歴史に残る名勝負として語り継がれました。 |
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『拾遺集』恋一・622 |
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私の恋は、じっと心に秘めてきたけれど、顔や表情に出てしまっていたようだ。「恋のもの思いでもしているのですか?」と、人に尋ねられるほどに。 |
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恋心というのは微妙なもので、恋する人に出会ったり、もの想いにふけっていたりすると、他人は敏感に気付いてしまうようです。「何か物思いにふけってらっしゃるようですね。ひょっとして恋でもされましたかな?」という他人の問いかけをそのまま歌に取り入れて、はっと自分の恋心に気付くといった、とまどいと恋の喜びを表現しています。倒置法を用い、「物や思ふ」と会話を取り入れた手法が見事です。詞書によると、960年に村上天皇が開いた「天徳内裏歌合(てんとくだいりうたあわせ)」で詠まれた歌です。「忍ぶ恋」の題で41番・壬生忠見(みぶのただみ)の「恋すてふ」の歌と優劣を競い合いました。この2首はどちらも名歌だったため、判者が困ってしまったのですが、天皇が兼盛の歌を口ずさんだことで勝ちとなったといいます。当時の歌人たちにとって歌合は重要な晴れの舞台だったのです。 |
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【しのぶれど】
「しのぶ」は「こらえる」を意味します。人に知られないよう心に秘めてきたけど、の意味です。
【色に出でにけり】
「色」は色彩ではなく、表情や顔色を意味します。「色に出づ」で恋愛感情が顔つきに出ることを示しています。「けり」は感動の助動詞で、人に言われてはじめて気が付いたことを表しています。
【ものや思ふ】
「もの思ふ」は恋について想いわずらうことを意味しており、また「や」は疑問の係助詞です。
【人の問うまで】
他人が尋ねるほどに、の意味です。ものや思ふ、に繋がる上下の句が逆さまの「倒置法」を使っています。 |
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●平兼盛像は箱根のMOA美術館に展示されています。現存する歌仙絵は、秋田藩主佐竹家に伝来したため佐竹本と呼ばれる2巻の歌仙絵巻が最も古いものです。平兼盛像は、上巻の最後に描かれています。 |
●「忍ぶれど」の歌は、映画「ちはやふる 結び」で勝敗を決める重要な札になりました。全国大会決勝戦、瑞沢高校かるた部、太一の決断はいかに? |
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●「天徳内裏歌合(てんとくだいりうたあわせ)」は、後宮の女性たちの娯楽も兼ねていて、大勢の観戦者でにぎやかな歌合だったと思われます。すでに勝敗は左方の大勝でしたが、最終組の兼盛と41番・忠見の勝負は歴史に残る大一番となりました。歌合の作者に選ばれることは歌人にとって名誉なことでした。この時は12の題が与えられていて、それにふさわしい歌を作って提出します。その歌は歌合の場で講師(こうじ)によって読み上げられるので、本人は歌合の場にはいません。「袋草紙」によると、勝ちを知らされた兼盛は、躍り上がって喜び、他の自作歌の勝負には目もくれずに感謝の礼をして退出したとあります。一方、負けた忠見はその後食欲不振になり亡くなったと「沙石集」には記されています。その説話の面白さから2首を1組として百人一首に選んだ珍しいケースだといえます。
●平安時代の「狭衣物語」では、東宮に源氏の宮への恋心を指摘された狭衣の心中を「人の問ふまでになりにけりよ」と、歌の結句を引用して表現しています。 |
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●平兼盛の歌は、「忍ぶ恋」の題で平安宮内裏清涼殿で開かれた天徳四年内裏歌合で披露され、勝ちとなりました。 |
●小倉百人一首の編纂の舞台となった嵐山・嵯峨野では、100基の歌碑めぐりを楽しめます。「忍ぶれど」の歌碑は、亀山公園にあります。 |
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