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文屋朝康
(ふんやのあさやす。生没年未詳、9~10世紀)
六歌仙の一人、22番・文屋康秀(ふんやのやすひで)の息子です。駿河掾(するがのじょう)、大舎人大允(おおとねりのだいじょう:宮中に交替で宿直し雑用をする仕事)などの役職に就きました。恵まれない、低い官位のまま、一生を終えましたが、歌の才能は広く認められており、「寛平御時后宮(かんぴょうおんときこうぐう)歌合」や「是貞親王家(これさだのみこのいえ)歌合」など平安時代の有名な歌合に参加し、「古今集」成立直前の歌壇で活躍しました。歌は「古今集」に1首と「後撰集」に2首だけ残っています。ただし、百人一首の22番「吹くからに」は、父・文屋康秀の作になっていますが、息子の朝康の作であるというのが通説となっています。他に朝康の歌として伝わるものはありません。 |
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●「秋の野に 置く白露は 玉なれや つらぬきかくる 蜘蛛の糸すぢ」(秋の野におかれた白露は玉なのだろうか。それを蜘蛛の糸が貫いて草の葉にかけているよ、なんときれいなんだろう。「古今集」蜘蛛の巣におかれた露が朝日に輝いている情景を詠んだこの歌も、白露と玉(真珠)との二重のイメージとなっていて、はかなく美しい歌です。)
●「浪分けて 見るよしもがな わたつみの そこの見るめも 紅葉散るやと」(浪を分けて海中に入り見てみたい、海藻のみるめも紅葉して散っているのではないか。「後撰集」紅葉した木の葉が散り始める頃、海底でも同じ様な現象が見られるのかと思いをはせた幻想的な歌です。) |
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●朝康の歌は勅撰集に3首しか入集していません。すべて秋の歌で、2首には漢語の「白露」が詠まれているのが特徴です。白露を玉に見立てる詠み方は、すでに12番・遍照が「浅みどり 糸よりかけて 白露を 玉にもぬける 春の柳か」(新芽のついた枝が浅緑色の糸をより合わせたものならば、そこに置いた白露は糸に貫かれた水晶の玉、春の柳よ。)と詠んでいます。朝康は「白露の」の歌で、秋・白露・風の組み合わせによって、幻想的で動きのある情景を創り出しました。なお、父の22番・康秀の「吹くからに」の歌は、朝康の歌であるというのが通説です。 |
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●滋賀県東近江市にある押立神社(おしたてじんじゃ)は、文室氏(ふんやうじ:文屋とも表記していた)が氏神とした押立大明神を祀っています。宮司さんは文屋康秀の子孫にあたる方だそうです。鳥居左手前に父・文屋康秀と息子・文屋朝康の歌碑があります。 |
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●残っている朝康の歌はすべて秋の歌で、2首には漢語の「白露」が詠まれているのが特徴です。蜘蛛の巣においた白露が朝日に輝いている様子を美しく表現しています。 |
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