秋の和歌
   百人一首の中で、「秋」の和歌は全部で16首あります。出典の内訳は、古今集6首、後撰集2首、拾遺集1首、後拾遺集2首、金葉集1首、新古今集4首です。なお、75番の藤原基俊の和歌には「秋もいぬめり」という言葉がありますが、千載集では雑に分類されています。 

秋の田の かりほの庵の とまをあらみ わが衣手は 露に濡れぬれつつ              天智天皇(てんじてんのう)
626年~671年
「後撰集」秋中・302
奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋はかなしき 猿丸大夫(さるまるたいふ)
生没年不詳
「古今集」秋上・215
ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは 在原業平(ありわらのなりひら)
825年~880年 )在原業平朝臣
「古今集」秋・294
吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ 文屋康秀(ふんやのやすひで)
生没年不明
「古今集」秋下・249
月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど 大江千里(おおえのちさと)
生没年不明
「古今集」秋上・193
心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
生没年不明
「古今集」秋下・277
山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ もみぢなりけり 春道列樹(はるみちのつらき)
生年不祥~920年
「古今集」秋下・303
白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける 文屋朝康(ふんやのあさやす)
生没年未詳、9~10世紀
「後撰集」秋・308
八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり 恵慶法師(えぎょうほうし)
生没年不祥、10世紀頃の人
「拾遺集」秋・140
あらし吹く 三室の山の もみぢ葉は 竜田の川の にしきなりけり 能因法師(のういんほうし)
988年~1050年頃
「後拾遺集」秋・366
さびしさに 宿を立ちいでて ながむれば いづこも同じ 秋の夕ぐれ 良暹法師(りょうぜんほうし)
998年~1064年頃
「後拾遺集」秋・333
夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く 大納言経信(だいなごんつねのぶ)
1016年~1097年
「金葉集」秋・183
秋風に たなびく雲の たえ間より もれ出づる月の 影のさやけさ 左京大夫顕輔(さきょうのだいぶあきすけ)
1090年~1155年
「新古今集」秋・413
村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕ぐれ 寂蓮法師(じゃくれんほうし)
1139年~1202年
「新古今集」秋・491
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む 後京極摂政前太政大臣
(ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん)
1169年~1206年
「新古今集」秋・518
み吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり 参議雅経(さんぎまさつね)
1170年~1221年
「新古今集」秋・483
 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり 藤原基俊(ふじわらのもととし)
1060年~1142年
 
 「千載集」雑・1023