陰暦 6月25日
(8月10日) |
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酒田の余波日を重ねて、北陸道の雲に望む。遙々のおもひ胸をいたましめて、加賀の府まで百丗里と聞く。鼠の関をこゆれば、越後の地に歩行を改めて、越中の国市振の関に到る。この間九日、暑湿の労に神をなやまし、病おこりて事をしるさず。
文月や六日も常の夜には似ず
荒海や佐渡によこたふ天河 |
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ふみづきや むいかもつねの よにはにず
あらうみや さどによことう あまのがわ |
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酒田では人々とついつい名残を惜しんで滞在の日数を重ねてしまって、ようやく北陸道の雲に向かい、さらに旅を続ける決意を固める。まだ、はるか遠くまで旅をしなくてはならないという思いが、私の胸をつらくさせて、加賀の国府まで百三十里とか聞いている。鼠の関を越えると越後の地になり、気持ちを改めて旅を続けて、越中の国・市振の関に到着する。この間九日間というものは、暑さと雨にたたられて具合が悪くなり、病気になって旅の様子を記せなかった。
文月や六日も常の夜には似ず
<もう七月だなあ。七夕前の六日だと思うと、いつもの夜とは違った気持ちがするよ。>
荒海や佐渡によこたふ天河
<海の荒れ方はすごいなあ。その向こうには佐渡が見え、空には天の川が横たわっているよ。>
※ 現代語訳 土屋博映中継出版「『奥の細道が面白いほどわかる本 」中経出版の超訳より |
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