陰暦 5月 4日
(6月20日)
鐙摺、白石の城を過ぎ、笠島の郡に入れば、「藤中将実方の塚はいづくのほどならん。」と人に問へば、「これより遥か右に見ゆる山際の里をみのわ・笠島といひ、道祖神の社、かたみの薄今にあり。」と教ふ。このごろの五月雨に道いとあしく、身つかれ侍れば、よそながら眺めやりて過ぐるに、簑輪・笠島も五月雨の折にふれたりと、
笠島はいづこ五月のぬかり道
岩沼に宿る。
かさしまは いづこさつきの ぬかりみち
鐙摺や白石の城下を通り過ぎ、笠島の郡に入ったので、「藤中将実方の墓はどこのあたりであろう」と人に尋ねると、「ここからはるか離れた右手に見える山際の村里を蓑輪と笠島と言い、実方ゆかりの道祖神の社や、かたみの薄が今でも残っている」と教えてくれる。しかし、この頃の五月雨によって道が大変悪く、体が疲れたので、遠くから眺めやるだけで通り過ぎると、蓑輪に笠島も五月雨の季節に似合っていると思って句を詠んだ。
笠島はいづこ五月のぬかり道
<実方ゆかりの笠島はどこらへんか。この五月のぬかり道では訪ねてみたいが、とてもできそうもない。残念なことだ。>
その夜は岩沼に泊まった。
※ 現代語訳 土屋博映中継出版「『奥の細道が面白いほどわかる本 」中経出版の超訳より
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