|
|
|
その夜は飯塚に泊まる。温泉があったので湯に入って宿を借りたところ、その家は土間に筵を敷いていて、いかにもみすぼらしい貧しい家である。明かりもないので囲炉裏の火の明かりのあるところに寝場所を用意して横になる。夜に入って雷が鳴り、雨がひどく降ってきて、寝ている上から雨漏りがし、蚤や蚊に刺されて、とても眠れない。それに加えて持病までが起こって、気を失いそうである。夏の短い夜の空もやっとのことで明けたので、再び旅立ちをした。それでも、やはり夜のつらい名残があって気分が悪い。馬を借りて桑折の宿場に出る。はるか先まで続くこれからの道程を抱えながら、このような病気になるとは不安なことであるが、旅の途中でへんぴな土地の行脚をし、俗世間から身を捨てて、この世は無常でいつどうなるかわからないという悟りの境地であるから、道中で死ぬということも天の命令であると思って、元気を少し取り戻し、道を思いのままに踏み締めて、伊達の大木戸という場所を越した
※ 現代語訳 土屋博映中継出版「『奥の細道が面白いほどわかる本 」中経出版の超訳より |