飯塚温泉
陰暦  5月 2日
(6月18日)
  その夜飯塚にとまる。温泉あれば湯に入りて宿をかるに、土座に筵を敷きて、あやしき貧家なり。灯もなければゐろりの火かげに寝所をまうけて臥す。夜に入りて雷鳴り、雨しきりに降りて、臥せる上よりもり、蚤・蚊にせせられて眠らず 。持病さへおこりて、消え入るばかりになん。短か夜の空もやうやう明くれば、また旅立ちぬ。なほ夜の余波、心すすまず。馬かりて桑折の駅に出づる。遥かなる行末をかかへて、かかる病覚束なしといへど、羇旅辺土の行脚、捨身無常の観念、道路に死なん、是れ天の命なりと気力聊かとり直し、路縦横に踏んで伊達の大木戸を越す。  朗 読


止
 その夜は飯塚に泊まる。温泉があったので湯に入って宿を借りたところ、その家は土間に筵を敷いていて、いかにもみすぼらしい貧しい家である。明かりもないので囲炉裏の火の明かりのあるところに寝場所を用意して横になる。夜に入って雷が鳴り、雨がひどく降ってきて、寝ている上から雨漏りがし、蚤や蚊に刺されて、とても眠れない。それに加えて持病までが起こって、気を失いそうである。夏の短い夜の空もやっとのことで明けたので、再び旅立ちをした。それでも、やはり夜のつらい名残があって気分が悪い。馬を借りて桑折の宿場に出る。はるか先まで続くこれからの道程を抱えながら、このような病気になるとは不安なことであるが、旅の途中でへんぴな土地の行脚をし、俗世間から身を捨てて、この世は無常でいつどうなるかわからないという悟りの境地であるから、道中で死ぬということも天の命令であると思って、元気を少し取り戻し、道を思いのままに踏み締めて、伊達の大木戸という場所を越した

 
 ※ 現代語訳 土屋博映中継出版「『奥の細道が面白いほどわかる本 」中経出版の超訳より
▼ 持病が出て一回休み
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