陰暦 4月 3日
(5月21日)
那須の黒羽といふ所に知る人あれば、是より野越えにかかりて、直道を行かんとす。遥かに一村を見かけて行くに、雨降り日暮るる。農夫の家に一夜をかりて、明くればまた野中を行くに。そこに野飼ひの馬あり。草刈るをのこになげきよれば、野夫といへども、さすがに情知らぬにはあらず。「いかがすべきや。されどもこの野は縦横にわかれてうひうひしき旅人の道ふみたがへん、あやしうはべれば、この馬のとヾまる所にて馬を返し給へ。」と貸しはべりぬ。ちいさき者ふたり、馬の跡したひて走る。ひとりは小姫にて、名をかさねといふ。聞なれぬ名のやさしかりければ、
かさねとは八重撫子の名なるべし
曾良
やがて人里に至れば、あたひを鞍つぼに結つけて馬を返しぬ。
かさねとは やえなでしこの ななるべし
那須の黒羽というところに知っている人がいるので、ここから那須野越えに取りかかって、真っ直ぐに道を行こうと思う。はるか離れたところに一つの村を見かけて歩いていくと、雨が降り、日も暮れてきた。そこで農夫の家にお願いして一夜泊めてもらい、夜が明けると再び野中の道をただただ進んでいく。すると、そこで放し飼いをしている馬を見つけた。草を刈っている男の人に窮状を告げると、田舎の農夫とはいっても、さすがに人の情というものを知らないわけではない。「どうしたらよいものかなあ。私にはどうもしてやれないが、そうかといってこの野原は縦横にあちこちに分かれていて、慣れていない旅人では道を間違えてしまうだろう、それが気がかりでございますので、この馬に乗っていきなさい、そしてこの馬が止まったところで馬をお返しください」と言って貸してくれた。馬に乗っていくと、小さい子供二人が、馬のあとを追いかけて走る。一人は小さい女の子であって、名前をかさねと言う。田舎では聞き慣れない名前が優雅に思われたので、曾良が一句詠んだ。
かさねとは八重撫子の名なるべし
曾良
<かさねとはこの女の子にぴったりの八重撫子を意味する名前であろう。曾良作>
まもなく人家のあるところに着いたので、馬の借り賃を鞍のつぼに結びつけて馬を返したのだった。
※ 現代語訳 土屋博映中継出版「『奥の細道が面白いほどわかる本 」中経出版の超訳より
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