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ここ黒羽から殺生石に行く。館代の浄法寺殿から、馬で送ってもらう。この馬の手綱を取る男が、「短冊にあなたさまの発句をひとつ書いていただきたい」と求めてくる。風雅なことを望むものですなあ、いやあまいったまいったと感心させられたので、次の句を与えた。
野を横に馬牽きむけよほととぎす
<野原を進んでいくと、ほととぎすの鳴き声が聞こえる。さあ、馬子よ、そちらに馬を向けてくれよ。>
殺生石は那須の温泉が噴き出る山の陰にあった。石の毒気はいまだもっておさまらず、蜂や蝶などの虫の類が、砂の色が見えないほど重なり合って死んでいる。
※ 現代語訳 土屋博映中継出版「『奥の細道が面白いほどわかる本 」中継出版の超訳より |