芦野

陰暦 4月20日（6月 7日）		また、清水流るるの柳は、蘆野の里にありて、田の畔に残る。この所の郡守、戸部某の、この柳みせばやなど、折々にのたまひ聞え給ふを、いづくのほどにやと思ひしを、今日この柳のかげにこそ立ちより侍りつれ。　　　　　　田一枚植ゑて立去る柳かな
たいちまい　うえてたちさる　やなぎかな
	また、西行法師が「清水流るる」と詠んだ柳は、芦野の里にあって、今でも田のあぜに残っているという。この地の郡主で、戸部なにがしという者が、「この有名な柳を見せたいものです」などと、折々におっしゃってくださった。その柳を、どこらあたりにあるのだろうかと思っていたが、今日とうとうこの柳の陰に立ち寄ることができた。　　　　　　田一枚植ゑて立ち去る柳かな　　　<有名な柳の陰で西行法師をしのんでいると、いつのまにか時間が過ぎ去り、気がつくと目の前で田を植えていた人々は田を一枚植え終えて立ち去ってしまっていた。私の名残惜しいが、ここらへんで柳の陰から立ち去ることにしよう。> 　　　　　※　現代語訳　土屋博映中継出版「『奥の細道が面白いほどわかる本｣中経出版の超訳より


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