深 川
陰暦  3月27日
(5月16日)
 月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人なり。舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老を迎ふる者は、日々旅にして、旅を栖とす。古人も多く旅に死せるあり。予もいづれの年よりか、片雲の風に誘はれて、漂泊の思ひやまず、海浜にさすらへ、去年の秋、江上の破屋に蜘の古巣をはらひて、やや年も暮、春立てる霞の空に、白川の関越えんと、そぞろ神の物につきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて、取るもの手につかず。ももひきの破れをつづり、笠の緒つけかへて、三里に灸すうるより、松島の月先づ心にかかりて、住める方は人にゆづり、杉風が別墅に移るに、
   草の戸も住みかはる代ぞひなの家
面八句を庵の柱にかけておく
 朗 読


止
草の戸も 住み替わる代ぞ ひなの家
 くさのとも すみかはるよぞ ひなのいえ
 月日はずーっと旅を続ける人のようなものであって、行く年来る年もまた旅人である。舟を漕いで生活をしたり、馬を使った仕事をして老人となっていく者は、毎日が旅であって、旅を住居としている。昔の人もたくさん旅をしながら死んでいるのである。私もいつの年からか、ちぎれ雲が風に吹かれて漂うように、誘惑されて、旅に出てさまよい歩きたい気持ちが我慢できず、海や浜辺をあてもなく見て回り、去年の秋、隅田川のほとりのぼろ屋に戻って蜘蛛の巣を取り払って暮らしているうちに、しだいにその年も暮れ、春になり霞が立ち込める空を見るにつけても、あの名高い白河の関を越えようと、人をそわそわさせる神が取りついて私の心を狂わせ、道祖神が招くような気がして、取るものが手につかない。旅行着の破れ目を直し、笠の紐をつけ替えて、足に灸をすえるともうすぐに、あの有名な松島の月の美しさが真っ先に気にかかって、住んでいる家は他人に売却し、杉風の別宅に引っ越しするときに、句を詠んだ。
     草の戸も住みかはる代ぞひなの家
<私が住んでいた草庵も住み替わるときが来た。季節もちょうど雛祭りの頃なので、今度は雛人形を飾るような華やかな家となることだろう。>
「草の戸も」の句を発句とする連句の初めの八句を、草庵の柱にかけておいた。
   
 ※ 現代語訳 土屋博映中経出版「『奥の細道が面白いほどわかる本 」中経出版の超訳より
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