|
|
|
丸岡の天龍寺の長老は、私と昔からの付き合いがあるので訪ねた。また、金沢の北枝という者がほんのちょっと見送ると言って、とうとうこの地まで私を慕ってついてきた。場所場所の風景を見過ごさずに句を思い続けて、折々しみじみとした趣向を話してくれる。今、いよいよ彼と別れるにあたって、
物書きて扇引きさく余波哉
<夏に使っていたがもう秋なのでいらなくなった扇に、何か書きつけて引き裂いて捨てようと思うけれど、やはりそれは名残惜しく思われることだ。>
五十丁ほど山に入って永平寺をお参りする。道元禅師のお開きになった御寺である。都から離れて、このような山の中に、その跡をお寺としてお残しになったのも貴い理由があるとか言うのである。
※ 現代語訳 土屋博映中継出版「『奥の細道が面白いほどわかる本 」中経出版の超訳より |